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# カルチャー# 成長環境# 組織づくり

freeeはホワイト企業なのか?ミッションドリブンな組織が描く理想の姿とは

「働きがいのある会社」や「ホワイト企業」ランキングにたびたび名を連ねるfreee。働きやすい企業としてのイメージが広がる中、その実態とはどのようなものなのでしょうか。

“ホワイト企業”という言葉の背景にある、真のfreeeらしさとは何か。人事基盤部長の笠井さん、執行役員CCO(Chief Culture Officer)の辻本さんに問いかけます。

インタビューから浮かび上がったのは、挑戦と成長を後押しするカルチャー、多様なメンバーが安心して力を発揮できる環境、そして、それらすべての土台にあるミッションの存在でした。

【プロフィール】
笠井 康多|人事基盤部長
千葉県出身。住友商事、BCGを経て、2020年1月にfreeeにジョイン。入社後は経営企画を担当、2022年から組織基盤部長。中途採用部長を兼任を経て2025年から人事基盤部長として組織人事機能全体を統括。趣味は読書と株式投資(目標はfreeeの桐谷さんと呼ばれること)
【プロフィール】
辻本 祐佳|執行役員CCO(Chief Culture Officer)
和歌山県出身。楽天株式会社での法務経験を経て2017年8月freee入社。今後のfreeeカルチャーを再定義するプロジェクト参画をきっかけに、2018年7月から社内のカルチャー浸透・組織での体現に取り組む。漫画・小説が好きで、あれこれ読んで感想を語るのが好き。

「きつホワイト」は、社会を変えるための働き方


ー率直にお聞きしますが、freeeはホワイト企業でしょうか?

笠井さん:働きやすい環境が整っているのは確かですが、だからといってゆるゆると過ごせる場所ではありません。自分自身の成長に常に向き合っていく、ある種の“きつさ”もある会社だと思います。そういう意味では、「きつホワイト」かな。(笑)


辻本さん:ホワイト企業という言葉にはさまざまな解釈があると思いますが、「安心して働けて、やりがいを感じられること」という定義なら、私はfreeeをホワイト企業だと思っています。

一方で、笠井さんがおっしゃるように、居心地の良さに甘んじていられるような場所ではないのも事実です。新しい挑戦に手を伸ばし、常に自分を更新していくことが求められます。人によってはそれが“きつさ”にもなると思うし、“面白さ”にもなるはず。私自身は、freeeで働いていると魂が燃えている感覚があって、それがすごく楽しいです。


ー成長や挑戦が求められるというのは、具体的にどういったことですか?

笠井さん:freeeでは、背伸びが必要なストレッチ目標を掲げることが基本になっています。頑張れば届くけれど、少しでも気を抜けば届かない。そんな絶妙なラインを設定することで、個人の成長スピードを最大化していく狙いがあります。

freeeはこれまで、クラウド会計という新しい市場を開拓してきました。今もなお、道なき道を進んでいる状態です。だからこそ、一人ひとりが当事者としてリスクを取り、試行錯誤しながらチャレンジし続けなければなりません。

辻本さん:壮大に聞こえるかもしれませんが、freeeは本気で社会を変えようとしている会社です。スモールビジネスの現場には、多様な価値観や生き方があり、それらが社会に新しい選択肢や可能性をもたらしています。しかし現実には、スモールビジネスの挑戦を阻む壁がまだ多く存在しています。

私たちは、その壁を取り除き、スモールビジネスの皆さんがもっと自由に、自分らしく活躍できる世界をつくりたいと思っています。そのためには、私たち自身も常に前例のないことに挑み、成長し続けなければならないんです。


個の熱量が連鎖する、freeeの理想のチーム像


ー 挑戦や成長が日常的に求められる環境において、どのような組織のあり方が理想だと考えますか?

辻本さん:freeeが目指す理想の組織像はまさに「ムーブメント型チーム」だと思っています。「ムーブメント型チーム」は、freeeグループが定める価値基準の一つで、「ミッションに共感し集まった仲間たちが自律的にアクションを起こし、その熱狂が伝播することで、より良い相乗効果を生み出していく集団である」と定義しています。

freeeのミッションに限らず、自分のまわりで起きている課題や、社会に対して「こうしたい」と思う気持ち。それらに突き動かされて、自ら積極的に動ける人が集まっていることが、freeeの強さの源だと思っています。

そして、個々の熱が周囲に伝わっていき、やがて大きなうねりになっていく。そんな組織のあり方が、freeeらしさでもあり、私自身が希望を持って描き続けている姿です。

笠井さん:僕も、辻本さんのおっしゃる「ムーブメント型チーム」はまさに理想の姿だと思っています。その上で、「ムーブメント型チーム」を実現するためには、全員がフロー状態で働けることも必要だと考えます。



ー 「フロー状態」とはどういったことでしょうか?

笠井さん:言い換えれば、無我夢中で仕事に没頭できる状態のことです。目の前の仕事に時間を忘れるほどのめり込み、一日の終わりには「いい仕事ができた」という充実感が残る。そんな状態を、僕はフローと呼んでいます。

この状態をつくるには、いくつかの前提が必要です。たとえば、freeeが掲げるミッションや目指す方向性に自分の仕事がつながっていて、そこに意味や手応えを感じられていること。加えて、自分の努力に対してフィードバックや称賛がきちんと返ってくることも大切です。

さらに、人間関係の良さや心理的安全性も欠かせません。「今日はちょっと顔を合わせたくないな」と思うような関係性では、集中力もパフォーマンスも落ちてしまいます。だからこそ、環境面も含めて整えていくことが僕たちの大事な役割です。



ー たしかに、仕事以外の要素がパフォーマンスに影響することはありそうです。

笠井さん:人間関係にストレスを感じていたり、自分の居場所に不安を抱えていたりすると、本来の力は発揮しきれません。安心できる空気があってこそ、人は思いきって挑戦できるし、自らの意思で成長にコミットできる。

そのため、freeeは挑戦や成長を促すだけでなく、安心して力を発揮できる環境を整えることにも同じくらい力を注いでいます。両方が揃ってはじめて、魂を燃やして働ける場所になれると考えているからです。

「ここが自分の居場所だ」と思える組織が、一人ひとりの力を引き出す


ー 挑戦や成長を支えるには、安心して働ける環境が欠かせないというお話がありました。DEI(Diversity, Equity & Inclusion)が果たす役割も大きいのでしょうか?

辻本さん:DEIはまさに、「誰もが安心して力を発揮できる組織」を実現するための土台となると考えています。

「安心して働ける」と聞くと、最初に制度や仕組みを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、freeeにおけるDEIは目に見える部分だけでは語りきれないものだと感じています。一人ひとりが「自分はここにいていい」「ここが自分の居場所なんだ」と、心から思える状態をつくること。それこそが、DEIの本質的な役割だと思っています。


ー 形式ありきではなく、心の状態をつくることが重要なのですね。

辻本さん:そうですね。何よりも大切なのは、自分の存在や違いがちゃんと組織に認められていると感じられることです。多様な背景や価値観を持つ人たちが集まる組織で、自分の存在が尊重されていないと感じたら、「自分はこの会社で必要とされていないのでは」と不安になる瞬間もあるはず。そんな状態では、何かに本気で向き合うことも難しくなってしまいます。



ー DEIという観点では、具体的にどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

辻本さん:LGBTQの方に関する社内発信、子連れ出社「つばめっこスペース」の実施、特性に応じた支援体制の整備など、多方面で取り組みを進めています。

特に現在はジェンダーギャップの解消に注力していて、2030年までに男女比率をそれぞれ45%以上にすることを目標としています。残りの10%には、性別による分類を望まない方も含めています。

ただし、構成比率を整えることは大切な一歩ですが、それだけで本質的な課題が解決するとは考えていません。たとえ数字のバランスが変わっても、構造的に少数派であり続ける方もいます。本当に目指したいのは、誰もが「ここにいていい」と心から思える環境。その実現に向けて、私たちはこれからもあるべき姿を問い続け、行動していきます。

freeeの組織そのものが、社会に示すメッセージとなる


ー 組織に多様性が生まれることで、どのような変化や良さが生まれるのですか?

笠井さん:多様な視点が集まることで、意思決定の質が確実に高まると感じています。背景や経験が似た者同士だけで議論をすると、どうしても同じような意見に偏ってしまい、重要な論点を見落としてしまうことがあります。

一方で、異なる価値観や立場を持つ人たちが集まると、見えてくる景色が変わっていきます。互いの視点を補い合い、ときには思いもよらない問いかけが生まれ、議論は一段、また一段と深まっていきます。もちろん、その分だけ話し合いには時間も労力もかかりますし、全員が納得できる結論にたどり着くには根気も必要です。

それでも、対話を重ねて導き出した結論の方が組織としても納得感があり、ミッション実現につながりやすい意思決定となるはずです。



ー 改めて問います。なぜfreeeは組織づくりにこれほどまで真剣に向き合い続けているのでしょうか?

辻本さん:私たち自身の存在が、社会へのメッセージになり得ると考えているからです。freeeはプロダクトを通じてミッションを実現しようとしている会社ですが、「どんな組織であろうとするか」という姿勢も、世の中に働きかける手段の一つであると考えています。

DEIの取り組みも、社内だけに閉じた話ではありません。「freeeができているなら、自分たちにもできるかもしれない」。そんな風に、誰かの背中をそっと押せる存在になりたい。私たちの組織のあり方が、社会にとっての“当たり前”を少しずつ変えていけると信じています。


ー 組織のあり方そのものが、社会にも影響を与えていくと。

辻本さん:そう思っています。すべての出発点にあるのは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッション。その実現を本気で願うからこそ、どんなプロダクトをつくるかだけでなく、どんな組織であるかにも、同じ熱量で向き合い続けたいんです。

笠井さん:安心して挑戦できる。多様な視点が歓迎される。それぞれが自分の強みを活かしながら、無我夢中で働ける。そんな状態が組織の隅々まで浸透したとき、freeeは社会に前向きな変化をもたらせる存在になれると信じています。

そして、その頃にはきっと、“ホワイト企業”という言葉の定義さえも、僕らが更新していけるはずです。



取材・執筆/早坂みさと
撮影/戸笈汐音