Share

Xでこの記事をシェアFacebookでこの記事をシェアはてなブックマークに追加する
# グローバル# エンジニア# キャリア# 転職# ミッション

グローバルな開発チーム作りを目指して——できたばかりの多国籍開発チームの責任者・高野の挑戦

2016年12月にfreeeにモバイルエンジニアとして入社し、2023年現在はグローバルチームの責任者をしている高野智史。ここでは高野がエンジニアとなりfreeeに入社した経緯と、入社後のキャリア、グローバルチームができた背景を紹介します。

なんでも自分で作れるようになりたいモチベーション

最初に勤務した受託の開発会社では広告系のウェブサイトやアプリの開発をしていました。

高野「もともとはMax/MSPやFlashなどのマルチメディアのソフトをきっかけにプログラミングにも興味を持ち、中村勇吾さんのthaなどに憧れていました。それもあって私が最初に働いたのは小さな広告系の開発会社でした。2年くらいして仕事に慣れてくると『もっと難しいことをしてみたい』『大きいプロジェクトに関わりたい』という欲が出てきて、転職しました。

転職先では、主にFlashを使ってより大規模な企業のブランディングサイトやキャンペーンサイトを作っていました。話題になるような大きい仕事も多くやりがいも感じられるようになりました」

高野はそこでエンジニアとして3年間働いたあと、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)に転職します。その理由を語ります。

高野「ブランディングサイトやキャンペーンサイトは作ったものに寿命があって、数ヶ月で見られなくなるものがほとんどでした。またクライアントの予算ありきだったので、サービスをこんな風にしたいという想いがあっても実現させることは難しかった。

当時は個人開発のiOSアプリがヒットする市場がまだあって、私も個人開発したアプリを販売してレビューを参考にしつつ機能開発を続け、10万ダウンロードくらいとそこそこ上手くいっていました。

しかしやはり仕事でも自分のサービスと思えるものを作りたい、と思い自社サービスがある会社に転職したいと考えるようになりました。何社か見ているうちに、ゲームやエンタメではなく暮らしが便利になるようなライフスタイル系のサービスが良いなと。

ちょうど話を聞きにいったDeNAはゲーム以外の新規事業を立ち上げようとしている時期で、社内スタートアップのような部署ができたところでした。色々と挑戦させてもらえそうだなと思い、転職しました」

DeNAでモバイルアプリとWebサービスの開発に携わることになった高野。仕事としてバックエンドに触れたのは初めてでした。

高野「もともといろいろな技術に触れるのが好きで、『自分で一通りサービスを作れるようになりたい』という想いがあったので、前職時代に独学でバックエンドの知識を習得し、iOSアプリとは別に小さな個人サービスを運用したりもしていました。

DeNA入社時は、実務としてさらに経験を積みたいと思い『特にバックエンドをやりたい』と伝えました」

時系列は前後しますが、高野のエンジニアリングへの好奇心はとても高く、freee入社後も少しの期間SRE(Site Reliability Engineering)チームに留学に行き、独学だと限界があるインフラ領域の知識も学びました。

これはfreeeの開発文化である「何でもやれる、何でもやる」を象徴するような出来事になっています。

課題ドリブンなサービスに携わって、誰かの悩みを解決したい

DeNAで3年間の経験を積み、当時のことを「技術力も伸び、充実した日々だった」と振り返る高野。そんな中、転職を考え始めたきっかけを語ります。

高野「DeNAの新規事業立ち上げチームではマーケティングを元に、世の中でこれからヒットしそうな領域をロジカルに見つけてサービスを開発していました。とても面白いアプローチで、実際に順調に成長したサービスもあります。

転職を考えたのは、プロダクトと自身の関わり方や仕事について考え始めたことがきっかけでした。ヒットするサービスを作ることより、『課題ドリブン』で誰かの悩みを解決するようなサービスを作りたい気持ちが湧いてきたんです。freeeへの入社前DeNAのグループ会社に転籍したのですが、あまりやりたいことができず。やはり具体的で尖ったミッションを持ち、組織の全員がそれを共有し、同じ方向を向いているような環境で働いてみたいなと」

転職活動を始めた高野。2016年の冬、何社かのカジュアル面談をうける中でfreeeと出会います。入社の決め手となったのは、ミッションへの共感でした。

高野「スモールビジネスの課題解決という事業領域に強く共感しました。

僕はどちらかというと仕事が好きな方ですが、自分の好きなことを仕事にしている人のことも魅力的に感じており、そういう人が多いスモールビジネスのために自分の技術を使って貢献できるということが魅力的でした。

また私自身もいつか自分でサービス作って、それで暮らしたいなってのはぼんやり考えているので、自分を楽にしてくれそうな事業に関われることも魅力的でした」

面接ではほかにも印象に残ったことがあると言います。

高野「話をしたfreeeの社員4,5人が全員が穏やかで、雰囲気が良く、フィーリングが合いそうな感じがしたんです。直感を大事にしてよかったと思います。

また技術的な深い話もすることができ、しっかりしてそうだなと思いました。一方で、2016年当時のfreee会計のモバイルアプリはまだ昨日も少なくクオリティも高くはありませんでした。モバイルエンジニアも少なく、まだ注力できていない状態だったんです。

それがむしろチャレンジングでした。すでに完成しているサービスならば、自分が入社するかどうかに関係なくうまく成長し続けるんだろうと想像できるけれど、未完成だったので自分が入社して意志を持って変えられる余白が多そうだなと。そんなこれからのフェーズの会社とサービスに身を置く方が楽しそうだと感じました」

こうして2016年12月モバイルエンジニアとして入社した高野は、3人目のメンバーとしてモバイルエンジニアチームに配属されました。

ジャーマネとして、チームでの成果にフォーカスし始めた

(freee技術の日で登壇)

2016年12月当時、モバイルでリリースされていたfreeeのサービスは『freee会計』と『freee人事労務』のふたつ。高野はiOS/Androidの両面での開発を進めました。

高野「必要な機能がまだまだ足りていない状態だったので、ひたすら新規機能の開発をやっていました。小さいチームだったので、クイックに次に何を作るか、細かい仕様をどうするかなどミーティングして次々に機能をリリースしていきました。

今プロダクトで何をすることが大切で、優先度が高いのか、少人数でその意識を共有できていたことが大きかったと思います。技術的な興味だけではなく、プロダクトのロードマップに沿って自分のアイデアを出せるメンバーが揃っていましたね」

モバイルチームはモバイルアプリの持つ強みを最大限に活かし、Webアプリと差別化しながら開発の優先度を決めていきました。

高野「スマートフォンの強みはパソコンより気軽に触れること、常に持ち歩けること、カメラや各種センサーがついていることなどが挙げられます。例えば領収書を撮影するだけで入力を補完し、なるべく楽に仕分けが登録できるなど、強みを活かせるような機能開発を意識して行うようにしました。

特に新機能に関してはそこまでWeb側のサービスと足並みを揃えて開発することは少なかったです。どれくらい使ってもらえるかはリリースしてみないとわからないので、全てのプラットフォームで一気に開発しても、結局使われないと投資対効果が少ない。まず小さく始めるのがセオリーで、Webで実現した機能でニーズが高いものをモバイルで実装したり、モバイル発で開発する機能も、まずはiOS/Androidどちらかでリリースする、という風に進めていました」

入社して2年が経つと、高野はジャーマネ(※)の役割を打診され、話を受けることになりました。

(※マネージャーのこと。freeeでは単にメンバーの上に立つ者のことではなく、“タレント”であるfreeeのメンバーを叱咤激励し、成長・活躍をサポートする役割だと考え、ジャーマネと呼んでいる)

高野「ちょうど三十代に入ったころで、自分で作りたいものは一定作れるようになった感覚があったので、コードを書いて成果を出すこと以外のインパクトも出したいと思い、話を受けました。チームでの成果にフォーカスし始めたんです。

とは言っても、最初はマネジメントと言われてもよくわからなくて、試行錯誤しながら、プレイングマネージャーとして業務に当たっていました。チームの人数も少なかったので、ピープルマネジメントの梃子の力が大きくなく、モバイルチームとしての優先度の決定や、新しい技術選定などチームリードのような役割を担っていました」

さらにfreeeがモバイルに注力し始めると、しだいにチームの人数は増え、モバイルチームは部署になりました。高野は部署全体のジャーマネとして、業務にあたりました。

高野「部署内にチームがたくさん出来てくると、コードを書く時間が取れなくなってきて、本格的にマネジメントと向き合うことになりました。

ピープルマネジメント、アサイン、フィードバックを通して、プロダクトや開発組織全体にどのようなインパクトを与えていくのが良いか試行錯誤しながら、部署内の各チームのジャーマネと連携して、部署全体の開発をうまく回すことに頭を使いました。またモバイルチーム以外への組織貢献や新卒採用にも携わることになりました」

グローバルチームで新たなカルチャーとインパクトを生み出すチャレンジ

(フィリピンオフィスでのfreee D&Iイベント)

2022年に入ると、高野はモバイルチーム全体のジャーマネに加え、新しく出来たグローバルチームのジャーマネも担当することになりました。その経緯を語ります。

高野「2021年にフィリピンのシステム開発会社 Likha-iT Inc(読み:リカーイット)を子会社化することが決まり、開発チーム全体に向けて『英語で開発していくチームに関わりたい人』という募集があったので、興味本位で手を上げたんです。すると、大きなチームでジャーマネを担当しているメンバーで手を挙げたのが私だけだったようで、選ばれてしまいました。

当然モバイル全体のジャーマネも楽な仕事ではなく、そんなに余裕がある状態ではなかったのですが、プラスアルファで大きい仕事をやることになり、こりゃ大変だという感じでした(笑)当時はどんな仕事をするか想像もつかず、不安70%、楽しみ30%くらいの感じでしたね。兼務してみると流石に無理が出て、モバイルチームをもう1人のジャーマネに任せ、現在はグローバルにフルコミットしています」

freeeがグローバルチームを作ることになった背景と、その意図を語ります。

高野「事実ベースで話すと、freeeは2021年に約300億円の資金調達があり、その大半をM&Aに使うと公表していました。Likha-iT Incというフィリピンを拠点とする開発会社とご縁があり、創業者の前田さんからは事業への熱量を、現地のエンジニアのインタビューからはエンジニアとしてのポテンシャルを感じ、子会社化することに至りました。

フィリピンというとエンジニアもアウトソーシングを行う企業が多いですが、開発をアウトソースしたかった訳ではありません。Likha-iTの買収をきっかけに、国籍や人種を問わず色々なバックグラウンドを持った優秀なエンジニアが集まる組織を作りたかったのです。

それによりfreeeのエンジニアリングのレベルを更に高めること、また異なる才能や興味やこだわりを持った人々がプロダクトと事業にコミットすることで、大きくなったfreeeにまた新たな非連続的な成長を起こしたい、と考えています。そのため、日本国内でも外国籍の優秀なエンジニアを積極的に採用しています」

立ち上がってもうすぐ2年弱が経過するグローバルチームでは、すでに10ヵ国以上のエンジニアが活躍しています。

高野「チームにはすでに40名以上のエンジニアが在籍しています。いくつかのチームに分かれて、アドバイザー領域のプロダクト(税理士・会計士・社労士の方々向けのプロダクト)、freee人事労務の一部、freee請求書など、複数のプロダクトを開発しています。

フィリピン拠点のエンジニア含め、各チームに複数の国のエンジニアが在籍し、主にスクラムで開発しています。フィリピンのオフィス環境面に関しても、単なるオフショア開発先ではなく、しっかりfreeeの一員として開発できるようfreeeと同水準のものを作りました。

コミュニケーションは主に英語ですが、英語がそれほど得意という訳ではないメンバーも活躍しています。全て英語でコミュニケーションができれば効率的ではあると思いますが、DeepLなどのツールを活用しながらであれば意思疎通はかなりできますし、このチームで働く上では、エンジニアリングスキルやカルチャーフィットの方が重要だと考えています。ジャーマネになるとコミュニケーション主体になるので、ある程度必要にはなってきますが。

またジャーマネや、チームのテックリード的な立場でも、日本人含め色んな国のメンバーが活躍しています。すごい勢いでチームが大きくなっているので、入社して数ヶ月でジャーマネに抜擢されるメンバーも複数名いますが、前向きに取り組み成果を出してくれています。本当に優秀で、人としても魅力的な人が多いチームです」

最後に、この先グローバルチームでどんなことをしていきたいのか、高野が今考えていることを語ります。

高野「この一年半は担当プロダクトもチームメンバーも急激に増えていき、本当にカオスでした。大変なことも多く、今もまだまだ安定している訳ではないのですが、ジャーマネが増えて、みんなチームとしての成果をリードしてくれていたり、屋台骨が出来てきている感触があります。

FAST RETAILINGやMercariなどのグローバルカンパニーでグローバリゼーションを担当した経験があり、強いビジョンと熱量を持ったメンバーも入社し、現在はグローバルチームが更に大きな成果を出していくための、カルチャー作りやプロセス改善に取り組んでいます。

この先数年で取り組んでいく事は色々考えているのですが、freeeの中でも一番生産性が高く、成果を出し続けられるチームにしていきたいです。そして、グローバルチームだからこそ作れるプロダクトで、スモールビジネスの課題を解決していけたらと考えています」