freeeを統合型経営プラットフォームを提供する企業として突き抜けた存在にするために——CFOからCPOに役割を変えた東後が今考えていること
2013年、freeeに入社した東後。長年COO(Chief Operating Officer)・CFO(Chief Financial Officer)を勤めてきましたが、2022年、プロダクト全体の責任者でありPdM(プロダクトマネージャー)組織全体をマネジメントするCPO(Chief Product Officer)に役割を変えました。この記事ではその理由と、今freeeがプロダクトに注力するわけ、freeeのPdM組織の在り方と求めている人材について語ります。
PdM、CPOの出現とfreeeにおける役割
2022年、CFO(Chief Financial Officer)からCPO(Chief Product Officer)へと役割を変えた東後。freeeにおけるCPOの役割を語ります。
「お客様にマジ価値(ユーザーにとっての本質的な価値)を届け切ることに責任を持っています。噛み砕くと、お客様がどんな課題やどんなペインを持っていて、それを解消するためにプロダクトとしてどんな価値を提供するのかを考え、やりきることに対して責任を持っています。
もちろんfreeeで働いているメンバー全員がその責任を持っていますが、CPOはプロダクトづくりを通してマジ価値を届けることを実現することに特に責任を持っています」
世の中でCPOという役割が少しづつ認識されてきている背景には、インターネット業界の急速な発達と、PdMの出現があったと語ります。
「CPOというポジションは、まだあまり一般的ではありません。CFOやCTOと比べると、やはりその知名度や浸透度はまだまだ低いと感じています。
その理由として、特に日本ではそもそもPdM(プロダクトマネージャー)自体が少ないことが挙げられます。最も近いのは商品企画等の役割だと思いますが、ソフトウェア開発におけるPdMは10年前くらいまではほとんど存在していませんでした。
それからインターネット業界を中心にいろんなサービスが生まれてきて、プロダクトをマネジメントする必要性が生まれ、PdMの役割が急速に認識されるようになりました。となると、より大きなビジョンを実現するために、プロダクト全体を見渡し、PdMの組織全体をまとめる人が必要になりCPOも徐々に増えてきているのだと思います」
freeeでCPOを作ることになった理由を語ります。
「PdM自体はもう5年以上前から存在していますが、特にこの2~3年、プロダクトの数が増え、その複雑性も増していく中で、開発組織の規模が大きくなり、それに伴ってプロダクト戦略組織も拡大してきました。戦略を描いていくことの重要性が増しているからです。
freeeはミッション『スモールビジネスを、世界の主役に。』を実現するための手段として統合型経営プラットフォームを提供することを目指していて、freee全体のプロダクトとしてどんなユーザー体験を届けるのか、どんな統合体験を届けるのかというのがすごく大事なわけです。
特に次の数年には、統合型経営プラットフォームを提供する企業として突き抜けた存在になれるかどうかが賭かる重要なフェーズです。色々な角度から統合体験を作っていこうとしている中で、freeeのプロダクトチーム全体がワンチームとして同じゴールを目指して動くことが今まで以上に重要になり、今まで以上に難しくなってきてるからこそ、CPOという役割が作られました。
とは言っても、CPOである私一人が全てをリードするというわけではなく、同じ目的意識を持ったメンバーが同じチームにいるということに意義があると考えています。PdMとプロダクトデザイナーはそれぞれ担当のプロダクトがあり、普段は当然その業務をしっかりとこなしていますが、究極的にはfreee全体のプロダクトを通して最高の体験をお客様に届けることを全員が目指しているからです」
freeeをPdMの育つ組織にするために
(freee主催のイベント『バックオフィスの日2023』にて登壇中)
長年、freeeでCFOを勤めてきた東後がCPOに役割を変えた理由には次のようなものがありました。
「CFO時代の数年間、色々なことを考え、投資家ともコミュニケーションを取りながら、お金をどれだけどこに投資するか意思決定してきました。
その中で、これから数年間のfreee全体の成長を考えると、やはり今はプロダクトに投資をしないと、freeeの目指してるミッションやプロダクトのビジョンを実現できないという考えに至りました。
プロダクトをより良くする——そんな課題に対峙して、これまで投資判断をしてきた自分が責任を持って、実際にやる側に回りたいと考えるようになりました。最終的には他の経営メンバーとも議論して決めました。
CPOとなって仕事内容がガラッと変わるかもしれないなと思いましたが、CFOとしてプロダクトに投資判断をしてきたという意味では、延長線上にあるんです」
CPOとして行っていることと、意識していることを語ります。
「CPOとはいえ、当然私一人で全プロダクトの詳細を理解できるわけはありません。
そもそも私のバックグラウンド的にも、プロダクトのエキスパートでもなければ、開発経験もないのです。なので、それぞれのプロダクトに関して、具体的にどんな機能を作るかについては基本的にメンバーに任せています。
それを前提として、私はfreeeが全体として同じ方向に向かえるようにすることや、欠けている視点がないかを補完することを意識しています。また、日本にPdMの経験を持っている人が少ない中で、freeeはPdMやUXデザイナーがどんどん育つ組織になるといいなと考えているので、人が育つ組織にできるかどうかについても日々意識しています」
PdMが育つ組織にする——そのために実際に行っている取り組みには次のようなものがありました。
「まず新しいメンバーのオンボーディングをするために、オンボーディングパートナーを設置したり、コンテンツの準備をしたりしています。
それから一人前のPdMになる上で必要な要件を設定して、チームとしてサポートする体制を整えています。社外の人からインプットを受ける機会を作ったり、プロダクトの企画をまとめたドキュメントをどのように改善していくべきか整理するなど、様々な角度でアプローチを行っています」
プロダクトのエキスパートでもなければ、開発経験もない。そう語る東後が、CPOとして知見を高め、成長していくための心構えを語 ります。
「座学ではなく、とにかく人の話を聞くことを徹底しています。freeeにはPdMの経験のあるメンバーもたくさんいるので、実際の経験がある人から学べることは多いですね。
PdMだけでなくfreeeのメンバー全員に期待したいこととして、経験がなくても、新しい領域でも、それが自分の成長や新しい気付きになりそうなことなら、成長意欲と好奇心を持って積極的にチャレンジしてほしいと考えていて、私自身もその一員でありたいんです」
求む、ドメインエキスパートとタケノコ人材
PdM組織を作っていく上で、これまでどんな経験をしてきた人に入ってきてほしいのか語ります。
「PdMのど真ん中の経験がある人はもちろん素晴らしいし、一番フィットすると思います。
ただPdMの経験が浅くても、自分が取り組んでいることを深く探求したり、業務やお客様の課題について深く考えて、具体的なアクションに結び付けてきた経験があれば、素質は十分にあると思います。また実際に得られた結果に基づいてさらなる変化を起こした経験や、組織横断的にプロジェクトを動かした経験があれば、素養は揃っているはずです。
もちろんエンジニアと仕事する機会も多いので、開発の経験もプラスになります。
私は、PdMは色々な業務の交差点にあると考えているんです。エンジニアとも関わるし、事業側とも関わるし、お客様の課題や業務も知らなきゃいけないし、プロダク トのことも知らなきゃいけない。それら全てに横断的に関わっていて、全てを詳しく知っている人はなかなかいないですが、その中のどれかについて造詣が深く、強みがあれば、それを生かして活躍できると思います。
今のfreeeのPdM組織を見ても、実に様々なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっています」
様々なバックグラウンドを持ったメンバー、そんな各領域のエキスパートをfreeeではドメインエキスパートと呼んでいます。意識的にそのようなメンバーで組織を構成してきた理由を語ります。
「お客さまの課題解決は簡単ではなく、freeeのプロダクトが扱う領域も広いので、様々な武器を持った人が集まることこそが組織を強くすると考えています。
大切なのはその知見の角度で、本当に良いプロダクト作りや解像度の高い課題解決に繋げるには、各領域で自分の経験に基づいた深い理解が必要です。
例えば、新しくPdMとして入社する人が今のfreeeには蓄積されていない業界や業務の知見を持っていたら、その業務上の課題を共有してもらうことで、プロダクトの届けられる価値は広がります。知見を直接プロダクトに反映させるというよりは、どちらかというと顧客理解のスピードが圧倒的に早まることに期待しています」
freeeには入社後、圧倒的なスピードで成長するメンバーがいます。彼らのことを「タケノコ人材」と呼んでいます。そのネーミングの由来と、込めた想いには次のようなものがあります。
「タケノコって面白いんですよ。成長スピードが速いのはもちろん、一つひとつの節が同時に伸びるんですよ。し かも真っ直ぐ。そして竹にまで成長すると、素材として強い上に柔軟性もあります。
『タケノコ人材』というネーミングにも、そんな風にまっすぐ強く柔軟に成長してほしいという思いが込められています。
皆さんこれまでいろんな経験をしてきていると思うんですけど、成功体験にとらわれず、一度はじめに戻って、好奇心と貪欲さを持って凄まじいスピードで成長していく。そしてPDCAサイクルがすごく早いスタートアップだからこそ、一つ一つの節を軌道修正しながら、真っ直ぐ急成長していくイメージです。
また、新しく生まれてくる事業課題やプロダクトによって環境や求められることがどんどん変わっていく中で、芯をぶらさずに柔軟に対応できる。そんな人材が活躍し、集まる組織を目指しています」
世の中を変えうるスタートラインに立ったfreeeをさらに成長させるために
チームで同じゴールを目指す大切さについて語ります。
「チームは、みんなで一つの同じゴールを目指して団結している状態が圧倒的に強いと考えていて、PdM組織も、freee全体としてもそうありたいです。反対にゴールが違うと、どんなにコミュニケーションを取っても、噛み合わない。
そのためには、やはりお客さまの課題や業務をしっかり理解することを原点に、それに対する共通見解をみんなで作ることが大事だと思います。
今なにが問題かというのを共有したときに、同じ解像度で『そこだね!』って言い合うことができ、ワクワクしながら、腹の底から『次はこれをやりたいね!』とみんなが思える。メンバー全員が同じ課題感や解像度で、お客さまの業務や課題を見ることができれば、自然と向かうべき方向性は一緒になっていくと思います。
そのためにはやはり原点に立ち戻って、お客さまの課題と、それに対してfreeeが提供する価値が何かというところを一緒に探っていくに尽きます」
freeeでこれからPdMとして働く人が得られる経験には次のようなものがあると言います。
「freeeはまだスタートアップであり、成長過程にあるとはいえ、少なくとも世の中を変えうるスタートラインには立っていると考えていて、これからの成果に責任を持ちながらプロダクトマネジメントをする経験は、非常に貴重なものになるはずです。
お客様の業務や課題を深く掘り下げ、それを解決するためにプロダクトや新機能を作り、その価値で社会を変えていく。変化の激しい環境で、自分が考えたプロダクトが世の中にインパクトを生み出す。ワクワクしながらそんな経験をできる数少ない環境であることは確かです」
freeeは既存のプロダクトと新規プロダクト、どちらもバランスよく成長させることを目指しています。
「既存のプロダクトにもまだまだ改善するべきところがたくさんあるし、既存だからこそ抱えている課題もたくさんあります。同時に新規プロダクトの開発は統合型経営プラットフォームを作る上ですごく大事なので、片方だけじゃなく、どちらにも注力することが大事です。
そのバランスをどう決めるかは、まさに重要な投資配分の意思決定になります。
色々な要素を考慮しながら、どちらかに偏りすぎず、次の成長のための種をちゃんと撒くことが大切だと考えています」
最後に、これから入社する人や、freeeを転職・就職の選択肢に入れている人に向けての東後からのメッセージを届けます。
「世の中に新しい価値を提供するプロダクト作りに携わることはすごく楽しい仕事だなと思っています。
そして、せっかくプロダクトを作るなら、本当に価値があると信じられて、本当に世の中を良い方向に進化させることができるものに携わるのが良いんじゃないかと思っていて、freeeにはそれが実現できる環境が整っています。
なので、少しでもそんなプロダクト作りに興味がある人はチャレンジしてほしいですね。一緒に働けることを心から楽しみにしています」