会計業務の効率化を目指すエンジニアが語る、freeeのエンジニア組織の魅力
2020年7月に入社し、『freee会計』の債権機能を開発するチームを率いている岩下 太。入社前はフロントエンドに特化したエンジニアだった彼は、freeeでバックエンドのスキルを習得し、オールラウンドに活躍しています。そんな岩下のこれまでの軌跡と、freeeのエンジニア組織の特徴をご紹介します。
エンジニア人生の出発──遊びでやっていたWeb制作が仕事になった
(休日、公園で 過ごす岩下)
岩下とインターネットとの出会いは、学生時代。当時はインターネットの黎明期でした。
岩下 「中高生の頃は『Yahoo!ジオシティーズ』や『前略プロフ』を利用して、自分や友人のWebサイトを遊び感覚で作成していました。日常的にパソコンやインターネットには触れていましたね。
大学では建築を専攻していましたが、CADを書くときにPythonを使っていました。流体形などデザイン性の高いものの図面は、プログラミングの結果として表示するのが主流になっていたんです」
大学卒業後、岩下は建築業界には進まず、ソフトウェアエンジニアになることを決意。その選択は、インターンでの経験に基づいていました。
岩下 「就職活動で友人のポートフォリオ作成を手伝ったとき、Webサイト作りの楽しさを思い出しました。また以前から興味があった分野なので、Webメディアを運営する企業のインターンに申し込んでみたんです。
そこでは新機能の開発やメンテナンスなど、幅広く経験させていただきました。それが楽しく、たくさんの領域を任されていたこともあり、結局そのまま新卒でインターン先に就職したんです。遊びでやっていたWeb制作がまさか仕事になるとは思っていませんでした」
それから、岩下はエンジニアとしてさまざまな技術を身につけていきました。しかし、新卒入社から4年が経った2017年になると岩下は転職を考え始めます。希望したのは大企業。そこには二つの大きな理由がありました。
岩下 「一つは、翌年子どもが生まれることが判明したので、単純に『より稼げるところに行かなきゃ』という思いがありま した。
もう一つは、大規模なプロダクト開発を経験してみたかったんです。当時、多くの仕事を裁量をもって任せてもらっていたおかげで、フロントエンドの新しいスキルをキャッチアップできていると感じていたので、スケールの大きな舞台で挑戦したいと思いました」
フロントエンドの新しいスキル──。それは思い返せば、業界全体のターニングポイントになるものだったと言います。
岩下 「ちょうどその頃は、フロントエンドの技術が大きく変わったタイミングで、バックエンドと同じように、分業が可能になったんです。
それまでフロントエンドは、マークアップ言語で画面を作成するのが主流でした。全てが一つのファイルにまとまっていたので、例えばデザイナーの作業を待って、エンジニアがプログラミングして、PMからもらった文言を入力して……、というように、仕事の進め方が直列的で非効率でした。私の担当していたWebメディアでも、毎年の特集に合わせてゼロからページを作成していて、膨大な時間が必要でした。
それがReactなど新しい言語が浸透してきたおかげで、パーツごとでの分割や、モジュール化、インポートなどができるようになりました。
一つのページを作るときに、機能ごとにファイルを分けられるようになったので、複数人で同じ設計画面に触れられるようになり、分業やメンテナンスが容易になったんです。他の人の仕事を待たなくても自分の業務ができるようになり、作業時間が大幅に短縮されました。
技術的にはサーバーサイドと同様に難しい技術課題に挑戦する機会が増えたことで、業界全体が面白くなったと思います」
岩下は、この時流に乗ってフロントエンドに特化しようと考え、転職先をフロントエンドに明るいリクルートに決めました。
freeeに入り、世の中の会計業務をアップデートしたい
約3年間働いたリクルートでも、飲食事業のウェブアプリケーションの開発、HR系のプロダクトの開発とさまざまな経験を積みました。
難易度の高い開発やマネージメントなど、充実した日々を送る岩下でしたが、2020年になると再び転職を考え始めます。
岩下 「前職は、流動的な社内制度のために入れ替わりが激しい組織でした。業務が属人的にならないよう、企業風土としてある一定の年数でほとんどの人が卒業していくんです。私もそれに倣って、キリのいいところで転職を考え始めました」
その時、頭に浮かんだ企業の中にfreeeがありました。
岩下 「freeeはWebメディアで働いているころから知っていました。周りに起業するエンジニアが多く、その際に『freee会計』を使っていたんです。
またエンジニア界隈では『freee Developers Blog』も有名で、私もリクルート時代の社内勉強会などで紹介していました。
さらにプロダクト・マネージャー・カンファレンスというイベントでfreeeのPM(プロダクトマネージャー)の方が『マジ価値(=ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えること)』を軸に業務をしていることを話していたのも 印象的でした」
当時から、freeeのエンジニアには良い印象があったと言います。
岩下 「『freee Developers Blog』のある記事に『年間200回のデプロイを行なっている』と書かれていたのを見たときは、素直にすごいな、と思いましたね。
200回もリリースを重ねていくと、こんなに機能が増えるんだ!と感動したし、プロダクトマーケットフィット(PMF)するには、フィードバックを受けて改善して、リリースする回数を重ねていかないといけないなと、実感したのを覚えています」
岩下はまた、数多くのデプロイを支えているfreeeの組織にも興味がありました。
岩下 「既に『freee会計』は大規模なプロダクトになっていて、障害が与える影響はとても大きいと思うんです。そんな中、スピードを重視してたくさんの機能をデプロイできるのは、ビジネスサイドのメンバーとエンジニアが互いに理解しあった上で、きちんと意思統一できているんだろうなと」
エンジニア的な観点から、freeeのことが気になっていた岩下。彼を後押ししたのは、家庭内での一コマでした。
岩下 「会計事務所で経理をやっている妻と、隣に並んでテレワークをしていた日のことでした。妻の話を聞いていると、会計業務には煩雑な作業が結構多いことに気が付いたんです。直接的な利益が発生する部署ではないことから、生産性向上のような動きが後回しにされやすいのかなと考えて、エンジニアのスキルを使って効率化できたらいいなと思いました。
そのとき、freeeのことが頭に浮かびました。今まではエンジニア的な側面でfreeeを見ていたんですが、初めてfreeeが世の中に提供している価値に目が向いたんです。そして『スモールビジネスを、世界の主役に。』というミッションに共感し、自分もfreeeに入ったら世の中の会計業務をアップデートできるんじゃないかと考えました」
こうして岩下はfreeeの面接を受けることを決意します。
バックエンドの開発を経験して知った、オールラウンダー組織の利点
(岩下が作った画面)
2020年7月、freeeに入社した岩下は、『freee会計』のワークフロー(経費精算、各種申請、支払依頼など)の開発チームに入ります。
岩下 「入社すると、コードレビューや障害対応を通して、何をどう作るかなど、技術的なことを教えてもらいながら画面を作り始めました。会計知識については、元経理のPMも多く、気軽に相談できる環境でした」
1年間在籍したワークフロー開発チームでは、多くの機能を開発・改善しました。
岩下 「『freee会計』は、導入していただいた企業に合わせて、様々な使い方に対応できるように機能の追加や拡張を続けています。
私が作ったのは、経費精算のみで『freee会計』を使用する従業員に向けたプランのホーム画面、従業員に対して付与する申請や承認の権限追加機能、別の会計ソフトを使っているけれど申請だけはfreeeを使いたい人向けの画面などです。
開発してリリースし、フィードバックを受けて改善するサイクルを繰り返すことで、幾つもの成功体験を積み重ねました」
そんな経験をす る中で、今まで所属していたエンジニア組織との違いに気がつきます。
岩下 「freeeはフロントエンドとバックエンドで組織が分かれていないんです。みんながオールラウンダーで、どっち側の言語も書けるし、知識にも明るい。
一方、私はそれまでフロントエンド専業だったので、バックエンドの知識やスキルが不足していました。そのぶんバックエンド側の取り組みについては、特に手厚いオンボーディングをしてくれました。
キャッチアップしながら業務に励む中で、はじめは簡単な実装を割り振ってくれたり、参考になる実装を教えてくれたり。結果的にバックエンドの知識も増え、使いこなせるようになりました」
freeeがこのようなエンジニア組織になっていることには、大きなメリットがあると言います。
岩下 「会社的な目線で言えば、『マジ価値』を追求しながら『理想ドリブン』でプロダクトを作る過程で、今まさに求められていることを優先することができます。タスクによってバックエンド、フロントエンドと必要なスキルが違っても、両方の知見があることで、柔軟な開発ができる組織設計になっています。
エンジニア個人の目線で言えば、どちらも経験してスキルを高めていく中で、自分の得意なものを見つけてもらいたいというメッセージがあるのだと思います」
また、岩下はユーザーとエンジニアの距離の近さにも魅力を感じています。
岩下 「ある機能を作ろうとするとき、まずPM・UXデザイナー・エンジニアが一丸となって、ユーザーヒアリングに参加し、求められているものを知ります。終わると、それぞれの目線で、何を作るか、現状のコードを生かしたまま作ることは可能か、など議論を交わします。
そこでもフロントエンドとバックエンド、どちらの知識もあって、freeeでは何がどう作られているのか把握していることが、早い意思決定を生み出していると思います。
また完成したあとは、ユーザーテストを行い、実際にリリース前に機能を触っていただき、フィードバックをもらっています。エンジニアが直接ユーザーの声を聞いてモノを作る環境は、非常に稀なので、この取り組みはプロダクトがさらに大きくなっても続けていきたいです」
新チームの責任者として、債権領域の効率化を目指す
(社内イベントで配信に出演する岩下)
入社して1年が経った2021年、岩下は新しいチームの責任者を任されました。
岩下 「今は、債権チームの責任者として『freee会計』の取引機能の中で債権に関わる部分の開発に携わっています。ここは『freee会計』がプロダクトとして成長していく中で、まだあまり開発できていない部分でした。そこで、機能を分割して『ここに人員を割いて工数をかけると、効率的に良い開発ができる』との判断があり、任せていただきました。
今はまだ立ち上がったばかりで、ユーザーヒアリングで課題を聞き出したり、アナリティクスを見て調査したり、何を作るのか決めている段階です。この分野はfreeeに入社した理由である『会計業務の非効率な部分を改善したい』という思いにダイレクトに繋がっているので、しっかり取り組みたいですね」
このほかにも、岩下は社内でさまざまな活動をしています。
岩下 「『横断フロントエンド委員会』と『会計フロントエンド委員会』という社内コミュニティに、自分の経験や強みを活かせるのではと思い参加しています。
ここは特にフロントエンドの得意な方が集まって、全社的に悩みを解決していくゆるい組織です。ときにはバックエンド出身の方が、フロントエンドの深い課題に直面することがあるので、定期的に開催しているミーティングに持ち込んでもらったり、Slack上のチャンネルで質問してもらったりして、課題解決に務めています」
そんな岩下が、freeeでの1年を総括します。
岩下 「成長の1年だったと思います。特に、周りのメンバーからレバレッジをかけてもらえたのが大きいですね。成長意欲を示すことで、責任感のある大きい仕事や面白い仕事を、たくさん任せてもらえました。
また入社以来ずっとリモートワークなので、コミュニケーションを手厚く取ってくれたのがよかったです。業務の延長でエンジニアの朝会やランチミーティングがあり、雑談も多めなので楽しかったです。ほかにも『freee Tech Night』などのエンジニアイベント、フリスピなどの全体イベントで声をかけてもらったので、リモートでも話せる人は多くなりました」
最後に、岩下が今後の目標を語ります。
岩下 「まずは今のチームで債権領域の効率化を実現することが、freeeのミッションの達成にも、freeeに転職した理由を満たすことにも繋がるので、しっかり励みます。4歳になる娘がいるの で、この子が学生のインターンや社会人になるまでに、バックオフィスに関わる全ての業務がいまよりも明るく楽しいものになるようにしたいですね。
それからエンジニア組織自体を、更によくしていきたいと思います。freeeのエンジニアは、プロダクトも好きだし、エンジニア組織自体も好きな人が多いと感じます。これからさらにエンジニアの人数は増えると思いますが、『freeeの組織はこういう取り組みがあっていいよね』って対外的にわかるような組織にしたいですね」
エンジニアの業務領域である、フロントエンドと、バックエンド。皆がその両方を体得していることが、freeeのエンジニア組織の魅力であり、強みです。その組織の一員として、岩下は会計領域の効率化を目指し、今日も努力を続けています。