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# 中途入社# 企画

始めるのに遅すぎることはない! ——未経験からデータアナリストになった岡田のキャリアと挑戦

素材メーカー、WEB・アプリ開発の受託会社、freeeとキャリアを歩んできた岡田 崇嗣。
転職のたびに職種を変え、2022年現在、freeeのデータアナリストとして活躍しています。ここでは岡田のキャリアの変遷とfreeeのデータアナリティクスチームについて紹介します。

素材メーカーからITベンチャーへ ——良いと思えるサービスをクイックに世に出す

(▲2022年現在の岡田)

大学時代は生物工学を、大学院時代は化学の研究をしていた岡田。新卒では、化学と親和性のある素材メーカーに就職しました。

岡田「大手素材メーカーのAGCで、粘着剤の開発やプラズマテレビの前面フィルターの色設計シミュレーションを担当していました。プラズマテレビの前面ってフィルムが何層にもなっていて、フィルムごとの色味を考慮した色設計をしつつ、機能を持たせる必要があるんです。

もともと自分で設計したものを世の中に出してみたかったので、とてもやりがいを感じていました。それに品質管理のための統計の知識や、色設計におけるモデルを使ったシミュレーションの経験は、今freeeでやっているデータ分析にも繋がっています」

6年半にわたる素材メーカーでの勤務。途中、岡田は必要に駆られてMBAスクールに入学し、結果的にこの決断が人生を変えていきます。

岡田「研究開発のほかに、別の素材メーカーさんからの買い付け業務や顧客折衝など、交渉する場面がたくさんありました。

交渉では相手のビジネスを知ることや、自社のコストを意識することは必須です。そこで私は経営的な考え方やロジカルシンキングを身につける必要性を感じ、MBAスクールに入学しました。

授業では経営学や新規サービスの立ち上げのためのビジネス戦略などを学びました。その一つひとつに面白さを感じると同時に、自分でゼロからサービスを立ち上げ、ビジネスを回してみたい気持ちが湧いてきたんです。

ちょうどその頃、IT業界では新しいサービスが次々と立ち上がっていて、自分も勢いのあるIT業界に身を置いた方が、ビジネスや新規サービスを作れるんじゃないかと」

岡田は、MBAスクールの卒業生であるITベンチャーの経営者にそんな話をしたところ、誘われることになり転職を決意します。

岡田「WEBサービスやアプリの受託開発をしている会社で、私はPM(プロジェクトマネージャー)・WEBディレクターとして入社しました。

畑違いのところに飛び込むのに不安はありませんでした。むしろ自分の人生を考えると、『良いと思えるサービスをクイックに世に出す』という、自分のやりたいことができないことの方が嫌だったんです」

岡田はPMとして、業務を開始します。

岡田「クライアントの事業やWEBサービス・アプリで実現したいことを理解しつつ、要件定義・UI/UXデザイン提案・仕様への落とし込み・開発進捗管理などを行い、最終的に納品するまでが業務でした。

始めはどうやって要件定義したり、プロジェクトを進行すれば良いのか右も左も分からない状況で、かなりの失敗や自信喪失も経験しました。

なぜ失敗したのか、どうすれば失敗リスクを減らせるのか、少しずつ学びながら徐々にスムーズにプロジェクト進行できるようになりました」

データ分析を軸にキャリアを歩みたい

受託会社での4年半の日々。後半2年間、岡田は新規事業の立ち上げを任され、2年目には数億円の売上を立てました。

岡田「ゼロから売上を作るところまで、全てを担当することになりました。具体的には、事業計画作成、WEBサイト制作のディレクションのほかにも、広告運用、営業、採用、チームマネジメントなど、その事業に関わる全てを任されました。

この経験を通して良かったのは、『何もないところからでも、なんとかなるもんだ』と思えたこと。

MBAの授業は為になったけれど、いわゆる絵に描いた餅でした。実際に事業を作ってみてはじめて、どうすれば顧客はサービスを購入してくれるのか、どうすれば売上を増やせるのか、リアルなビジネスを理解することができました」

岡田は事業を立ち上げることに自信を得た一方、ある種の不安も感じていました。

岡田「なんでもやってきたけれど、逆に言えば専門性がなく中途半端な感じがしていました。またこれから数年間、同じような働き方をするんだろうなと想像がつき、不安を感じていたんです。

一方、SNSやYoutubeを見ると、自分の好きなことや専門性について、ひたすら探求・発信している人たちが目に付き、彼らのように探求したいものがあるって素敵だなと思うようになりました。また、時代の流れとともにその動きは加速すると思ったので、自分も働く上で専門性を見つけたいと思い始めました」

岡田は自分の軸になるものを探して、さらなる転職を考え始めます。脳裏によぎったのは、MBAスクールで触れたデータ分析でした。

岡田「定量データやファクトを元に経営戦略を考える授業があって、とても感銘を受けたんです。定量的なファクトにもとづいて会社の向かう方向性を考えて、示すのは面白く、すごく説得力があると思いました。

それから趣味で企業分析をやっていて、頭のどこかで『データ分析を軸に仕事ができないかな』と思っていたんです」

ちょうどその頃、freeeからスカウトメールを受け取った岡田。カジュアル面談で切り込みます。

岡田「スカウトをもらったのはPdM(プロダクトマネージャー)のポジションでしたが、ダメもとで『未経験ですが、データ分析がやりたいんです』と聞いてみました。するとアナリティクスで責任者をしていた鎌田に繋いでもらえたんです」

鎌田との面談で企業分析の結果を見せた岡田。すると鎌田の目の色が変わったと言います。

岡田「『未経験でも、事業責任者目線ならではのビジネス構造理解力は、データアナリストとしての強みになるはず』との言葉をいただきました。自己流でもやってて良かったと思いました(笑)

また『施策フェーズへ移す時に考慮すべきポイント』を知っている点も評価していただきました。分析結果が出て向かうべき方向性がわかっても、効果的な施策を打つことが可能なのか、事前に擦り合わせておかないと、分析が活かされないことって多々あり、それを未経験ながらわかっていたんです。

それから話を聞くにつれて、鎌田のチームで働けるのであれば、自分のチャレンジしたいことができたり、向かっていきたいキャリアを歩んでいけそうとワクワクしました」

こうして2019年2月、岡田はデータアナリストとしてfreeeに入社しました。

分析チームの業務と、その価値を高めるために

(▲岡田が読んだ分析・機械学習・会計など業務に関わる書籍)

岡田は、freeeのデータ分析業務は大きく3つあると言います。

岡田「まずは『課題発見』です。どの機能がうまく使われていないのか、どこでユーザーが引っ掛かっているか、どこで『マジ価値(=ユーザーにとって本質的に価値のあるもの)』が届いていないのか。プロダクトや機能、ユーザー属性ごとに、データを可視化・集計してボトルネックを発見します。

そのあと『課題改善のためのアクション』に繋げます。何を改善すれば事業やプロダクトのKPI達成に繋がるのか、そのための絞り(ドライバー)を見つけます。いわゆる相関分析や因果分析です。

例えば、チャーンレート(解約率)を2%→1%にすることが事業KGIだとすると、継続しているユーザーと解約しているユーザーの行動傾向を分析し、どの機能の利用率を優先的に改善した方が良いか見極めます。そして、結果指標であるチャーンレートの先行指標として機能利用率をKPI化し、PDCAを回していきます。分析結果が事業部目標になり得るので、責任は重いです。

3つ目は『機械学習』を利用して、何かを予測することです。例えば『CS(カスタマーサクセス)活動において、どのユーザーが人介在のオンボーディングを必要としているのか』など、実現すべきゴールに合わせて対応しています」

岡田は入社以来、継続して知識のキャッチアップに努めています。

岡田「データ分析の経験がなく、会計の実務レベルの知識も乏しかったので、仕事に直結する勉強としては社会人になって一番やったかもしれません。

データ分析に関しては書籍も多く出ていて、興味のある分野でもあったので、学ぶことに楽しさを感じていました。『書籍費フリー制度』を使って、経費で購入できたのもありがたかったです」

岡田はデータ分析の知見を高めながら、課題発見・KPI設計サポートなどの実務に励みました。その途中、仕事の進め方に課題感を抱きます。

岡田「当初は他チームからのピンポイントの依頼にもとづいて分析し、結果を伝えていたんです。しかしそれでは分析結果がどうアクションに活かされているのか、うまく企画に繋がったのか、などのフィードバックが少なく、分析の価値が見えづらいという課題がありました。

分析は会社や部署の意思決定をサポートするものなので、分析チームが介在する意味をもっと実感したいし、社内にも知ってほしいと思ったんです」

岡田は他社の事例を参考に、改革に着手しました。

岡田「メルカリのイベントで自社の事例紹介があり、単にデータアナリストが依頼を受けて、結果を出して終わりではなく、PMや事業部と一緒にKPIを追いながら分析をするスタイルを知りました。『これいいじゃん!』と思い、自分で試してみてから、チームに『やってみませんか?』と提案しました。

今では新機能開発や施策を企画する時点から分析チームもアサインしてもらい、分析結果がどのような意思決定に繋げられているのか、どんな結果があればアクションに結びつくのか把握しやすくなりましたし、それによって能動的な提案ができるようになりました。

仕事の進め方をタスク依頼対応型からコミット型へ変更し、他の事業部と一緒になって『マジ価値』を追求しながら働く体制を作ることで、仕事の深さが変わってきたように思います」

アクションに繋げ切ることが何より大切

(▲分析合宿。中央が岡田)

岡田はほかにも、機械学習を活用することで、カスタマーサクセスの生産性向上に努めました。

岡田「もともと面接で『機械学習を活用した事業貢献にチャレンジしてみたい』と伝えたところ『好きにやってもらって大丈夫です。やりたいことができるように全力でサポートします』と、言ってもらっていたんです。そんな自由度の高いfreeeの仕事環境も、入社を決めた理由の一つでした。

入社してしばらく経った頃、機械学習のタスク自体はある程度できるようになっていたので、カスタマーサクセスチームの『どのお客様に直接コンタクトを取るべきか』という課題に向き合うことにしました。そこで自らコードを書いて『freee会計』のプランや行動履歴などの変数を組み合わせてモデリングを行い、人介在のオンボーディングを必要としているユーザーを予測によってスコアリングしました。

作った予測モデルは今も実際にカスタマーサクセスのオペレーションで使われていて、サクセスするユーザーが全体的にも増えました。データの力を利用して一定の成果をあげることができたのは嬉しかったし、自信になりました」

岡田はデータ分析の面白さを次のように語ります。

岡田「同じデータでも切り口を変えることで、見えてくる景色やインサイトが変わってくる点が楽しいですね。

具体的には、全体の解約率が2%だとして、そのデータだけを見ると『解約率は2%』で終わりですが、個人事業主と法人で分けてみると解約率に違いがあったりする。解像度を高くして原因を突き止めると、効果的な施策も変わってきます。

分析手法を変えると、見過ごしていたものから新たな発見を得られることが多々あります。その瞬間、自身の成長も感じられるし、モチベーションにもなっています。

また、freeeでは日々新しい機能やプロダクトがリリースされて、データもどんどん増えてくるので、新しい発見がしやすいのもデータアナリストとしてワクワクする会社だと思います」

岡田はデータアナリストとして働く上で大切にしているのは「アクションに繋げきること」だと言います。

岡田「データアナリストの自分が言うと怒られるかもしれませんが、分析フェーズよりも実行フェーズの方が意思決定の結果に及ぼす影響は非常に大きいと思っています。

どんなに正確な分析をもとにした意思決定をしても、実行フェーズがうまく機能しないと結果が出てこないし、逆に多少荒い分析と意思決定でも、自分たちは正しいと信じて実行し切れば成果が出ます。結局、人がやっていることなので、大切なのは行動の熱量や本気度なんです。

『データ分析の価値が出てくるのは、ユーザーにマジ価値が届け切れてこそ』と常に肝に命じています」

最後に、岡田がこれからの目標を語ります。

岡田「今後もデータ分析をキャリアの軸にしたいと考えています。freeeの自由で、挑戦を後押ししてくれる環境のもと、色々とチャレンジしていきたいです。

freeeのプロダクト内にはさまざまなデータが蓄積されていますが、それは一般的な統計データでは見られない、freeeにしか存在しないものです。しかし今はまだ人も時間も足りておらず、freee独自のデータを完全には有効活用しきれているわけではありません。

逆の見方をすれば、まだまだデータ分析によってfreeeのビジネスを加速させる伸びしろがあると思っています。

どういうスモールビジネスが成長しているのか、業界や事業特徴別の最適な財務数字はどのくらいなのか、潰れないスモールビジネスはどういう財務状況なのかなど、スモールビジネスをより解像度高く、リアルタイムに理解することで、『スモールビジネスを、世界の主役に。』できるようなデータ分析をしていきたいです」