チームで働くことの意味を見いだす──エンジニアが語るものづくり
「チームで働かないなら会社にいる意味がない」——そんな思いで freeeに入社したエンジニア・re-fort。
突然新規サービスの立ち上げを任されたり、既存プロダクトのUXの改善に携わったりしながら、一貫して『マジ価値』を追及し続けてきました。そんなre-fortがチーム開発や自身のキャリアについて語ります。
チームとして存在している意味を、より感じられるところで働きたかった
新卒でSlerに入社したre-fort。エンジニアとしてのキャリアを歩み始めました。
re-fort 「もともとゲームをつくったりしていたので、変数などプログラム特有の概念などは知っている部分がありました。そのぶん比較的キャッチアップの出だしは早く、少し本を読めばどういうことを意図しているか理解できる部分が多かったです。
業務ではお客様からシステムの依頼を受けたあと、言語やデータベースを決める要件定義から、実際にプログラムを書きプロダクトやシステムを完成させる実装までをやっていました」
業務に励みながらプログラミングを学んだre-fortは、さらなる経験を積むために転職を考え始めました。
re-fort 「自分が担当していた案件では『システムをつくる→納品』で終わっていて、運用の経験を積むことはできませんでした。一旦つくり上げたものがどう使われているかわからない、もやもや感があったんです。
エンジニアはつくるだけで終わりじゃなくて、どうやって保守性の高いプラグラミングをするかもスキルの見せどころです。ただ動くものをつくる人で終わりたくなかったんです」
一度システムをつくったときには、その良し悪しはわからないことが多いと言います。
re-fort 「実際に改修が発生して初めて『ここをいじるだけで対応できるな』など、システムの良さを実感できます。
エンジニアはある程度やると動くものをつくるのはけっこう普通で、程度にもよりますが『将来変えやすくつくる』『先を見越してつくる』ことこそが、求められる能力です。自分もそんなことができるようになりたいなと思っていました」
re-fortが2社目に選ん だのは、自社サービスを持っているメガベンチャー企業でした。そこでは社内事業の立ち上げに参加します。
re-fort 「上司が障がい者向けの学習支援などの一連のシステムのアイデアを出し、事業化することになって、開発に立候補しました。事業開始後、半年〜1年スパンで今の事業の説明をして『有望だね』ってなったら、予算が出て続けられますが、ダメだったらその事業は打ち切りでチームは解散するという、俗に言うステージゲート方式でした。
だから当時は、内部のエンジェル投資家に予算承認を得るために機能開発をするスケジュールで動いていて、とてもおもしろかったです。ヒリヒリしながらも充実した時間を過ごせました。
開発から運用まで経験できたことで、転職した時の『運用に挑戦したい』という目標は達成され、知識も身につけられました」
しかしそこでre-fortは、新たな課題を感じます。そしてさらなる成長のため、二度目の転職を考え始めました。
re-fort 「前職のチームは1人の社員に対して4、5人の業務委託のメンバーで働く体制が多く、メンバーはどちらかというと技術に特化して興味がある人が多いので、売上や会社のビジョンが彼らのモチベーションにつながらないなと感じていました。社内スタートアップだったにも関わらず、社員と業務委託のメンバーとの間にどうしても目標や目線のかい離があったんです。
転職を考え始めたのはそのころで、チームでの開発や組織に強みがある企業に行きたいと思うようになりました。せっかくチームで働くなら、チームとして存在している意味をより感じられるところで働きたかっ たんです。もし見つからなければフリーランスでもいいな、とも思っていました」
そのとき、以前スカウトを断っていたfreeeから連絡がきました。
re-fort 「一度スカウトメールが来たとき、まだ辞める予定はなかったので『半年後にまたメールお願いします』と言ったんです。そしたら、本当に半年後に来たんですよ(笑)。
そこでfreeeの開発チームについて調べると、チーム開発に長けていそうだなと感じました。そして面接を受け、しっかりスクラム開発をしているチームが存在することを知りました」
他にもfreeeを受けることに決めた理由があると言います。
re-fort 「私が開発・運用していた障がい者向けのサービスには年に1~2回、法改正によって計算ロジックが変わることがありました。
freeeも確定申告や年末調整の法改正によって、計算式が微妙に変わってきます。どうやってそのあたりの計算のロジックをうまくやってるのか興味がありました」
入社すぐふたつのサービスの立ち上げを担当し、開業の電子申告を可能に
(re-fortが作成した開業の電子申告画面)
2018年9月、アプリケーションエンジニアとして freeeの決算・申告チームに入社したre-fort。初月から新規サービスの立ち上げを丸々任されました。
re-fort 「入社すぐ『新しいサービスを立ち上げたいんだけど、丸っとお願いしていい?』と言われ、税理士登録 freeeというサービスを立ち上げました。これは税理士 試験に合格し、税理士として開業する人を手助けするためのものです。当時、入社からまだ1カ月だったのでびっくりしましたね。
サービス自体は、すでにあった開業 freeeと性質が似ていて、その税理士版という感じでした。私はPMやマネージャーと方向性を決め、開発に取り組みました」
リリースが終わると、さらにre-fortは開業freeeのとある機能の開発を提案しました。
re-fort 「開業の電子申告を可能にする機能を提案しました。
もともと開業 freeeは、基本情報・仕事の概要・事業開始予定日などの必要な情報を入力するだけで、開業に必要な書類が簡単に作成できるサービスです。しかし必要事項の記入が終わると、書類を紙に印刷し、押印し、所轄の税務署に郵送するか持ち込む必要があったんです。これは『マジ価値』じゃないな、と。そこでヒアリングを開始すると、電子申告の開発の必要性を裏付けするデータが取れました。
具体的には、起業に関心がある人に『起業に対して不安に感じていることで、起業に踏み切れない要因』をたずねたところ、『各種手続きが煩雑そう』と答えた人が4割近くいたんです。そのハードルを下げることが『マジ価値』だと思いました。
その結果を持ってPMに『開業届の電子申告できるようにしましょう!』って言ってみたら、企画が通ったんです」
また電子申告を可能にしたかった背景には、別の理由もありました。
re-fort 「2020年度の確定申告から、電子申告すると控除額が10万円も増えることになったんですよ。だから、開業の時点で『電子申告できますよ』と見せることで、メインプロダクトの会 計 freeeに対する期待感を膨らませられると思いました。
とくに、『可能ならオンラインで済ませたい』と考えている人に希望を与えたかったんです」
企画を出し、中心となって方向性を決めたre-fortは、チームの協力も得ながら実装をやりきりました。そして2019年10月、ついに開業 freeeの電子申告機能がリリースされました。
re-fort 「必要事項を書き終えると『電子申告しますか? 税務署に持ち込みますか?』とのポップアップが出て、選べるようになりました。
いつも機能をリリースすると、改善点を見つけ出すためにTwitterなどでエゴサーチをするのですが、反応も上々でした」
コロナ禍、『マジ価値』にこだわりながら会計freeeのホーム画面を変えた
(会計freeeのホーム画面)
入社して一年が過ぎたre-fort。二つの大きなサービスのリリースに携わりながら、設立freee、開業freeeの細かいUI/UXを地道に改善していきました。
そして2020年1月、決算・申告チームからグロースチームに異動し、業務の幅は会計freee、人事労務freeeなど多岐に渡るサービスにまで広がり、横断的に施策を考えることが求められるようになりました。
そんな中、新たなプロジェクトが始まりました。
re-fort 「会計freeeのホーム画面をリニューアルすることになりました。同時にコロナが世の中を襲い、中小企業の経営者が打撃を受け、在り方が変わっていくことが予測されました。その状況も踏まえたう えで、プロジェクトを進めることが必要でした。
社内で議論を進めていくと、ログイン後すぐに見えるホーム画面に必要なものは資金繰りレポートではないかと結論が出ました。キャッシュフローを常に見やすくし、意識してもらうことが大事だからです。
状況によっては、たとえば来月100万円入ってくるとしても、今すぐ手元にお金が必要な場合もありますからね。黒字倒産を防ぐために、アラートとして活用していただけることも期待しています」
しかし、資金繰りレポートを表示させるのには技術的な難しさがあったと言います。
re-fort 「ありがたいことに、会計freeeを使う期間が長くなるほど、資金繰りレポートのデータは増えていきます。もともとあった資金繰りレポート本体のページは、データの多い事業所だとすべて表示するのに時間がかかることもありました。
そのページを最もアクセス数のあるホーム画面に表示するとなると、とても負荷に耐えられません。そこで資金繰りレポートの集計ロジックから完全に変えないといけませんでした」
いかに早く、いかに負荷がかからないようにするか考えぬいたre-fort。他のエンジニアとの議論の結果、別のアプローチ方法に変えることで、集計が早く終わることがわかりました。
さらにホーム画面の負荷を軽くするための工夫は続きます。
re-fort 「資金繰りレポートの中でも本当にホーム画面に必要な情報は何か選定し、それ以外の情報を削ぎ落としました。
そして数値の正確性、サーバーへの負荷、処理速度のすべてに神経を使いながら実装していきました。結果として、ロ グイン後、重要な情報がストレスなく見られるようになりました」
そして実際のユーザーを対象にしたお試し期間を経て、2020年8月に法人向けホーム画面が、12月に個人向けホーム画面が無事に正式リリースされました。
この開発には、とくに思い入れがあったと言います。
re-fort 「普段行っている施策では、最終的なゴールが明確になっていることも多いんですが、この施策ではまず『ホーム画面に何を表示したらいいんだ?』ってところから議論がはじまって、エンジニアとしてすごくワクワクしました。
またプロジェクト自体、私のほかは入社1年目のPM、新卒入社4年目のUXと、若いメンバーをメインに担当しました。 メインプロダクトのホーム画面を若いメンバーで変えていった経験は、成功体験にもなっていますし、会社の懐の深さも感じました」
一連の開発には、答えがわからないことへの挑戦というテーマがあったとre-fortは振り返ります。
re-fort 「設立freeeや開業freeeには『これがわかりにくい』という意見が集まった箇所をわかりやすいものに変更していたので、正解がありました。
一方で、会計 freeeのホーム画面に関しては絶対的な答えがないんです。『旧ホームの方がいい』という意見は絶対に出るし、全員に対する正解は出せないと思っています。その中で腑に落ちる結果を求めてもがいてきたことにはおもしろさも、難しさもありました。
これからもいただいたフィードバックを参考に、日々改善していこうと思います」
チームのメンバーの未来が幸せになるように
(エンジニアの開発合宿風景)
気がつけば入社から二年がすぎていたfreeeでの日々。その中でfreeeには、なんでもやりたがるエンジニアが多いと感じています。
re-fort 「Webアプリケーションエンジニアの採用では、フロントエンドやバックエンドなど担当領域を絞って採用する企業様も多数ありますが、freeeでは担当領域は絞っていないんです。
そのため、PMから『これをやりたい』って言われた時に、フロントからサーバーまでひとりで全部できる人が多いですね。それはエンジニアとしてのレベルが高いってだけじゃなく、興味関心が広い人が多いんだと思います。ある目的に対して、基本的に全部自分でやりたいという、何でも屋が多いですね。
もちろんその中でも得意分野はあるけれど、特定の何かだけをやりたいよりは、みんな好奇心旺盛です。私もそうだと思います」
グロースチームの開発フローも、そんなre-fortに合ったものでした。
re-fort 「基本的には、業務の依頼は各事業部のやりたいことにPMが優先順位をつけていきますが、できるだけ企画の早い段階からエンジニアも議論に入り、技術的な観点から意見を出しています。
というのも、事業部とPMだけの議論で新しい企画が生まれても、開発に時間がかかり想定スケジュールを超えてしまうこともあります。ですから、早い段階でエンジニアが参加し、理想を少ない工数で実現する方法を考えることが、より早く『マジ価値』に近づくんだと思います。
エンジニアの 工数も使うため、全施策この方式がいいとは思っていませんが、『マジ価値』を追うには理想の形であることも多いと思っています」
PMとの企画会議では、意見が対立した時の落としどころがはっきりしていると言います。
re-fort 「落とし所は『マジ価値』ですね。ユーザーにとって何がベストか、が論点の主軸になるので、そこにフォーカスした会話で進めていけるのは働きやすいですね。
見てる目線は同じなので、個人と個人の意見のぶつかり合いにはなることはありません」
また前職と同じく、freeeチームでも業務委託のメンバーを抱えていますが、前職で感じたようなチーム内の温度差はないと言います。
re-fort 「チームでは3カ月の目標設定をしているんですが、業務委託のメンバーから『こういうことがやりたい』と、積極的な提案が出てくることも多いです。雇用形態で意識に差がないチームができていると思いますね。
私も一社員として『freeeにいてよかったな』って思ってもらえるように、『こういうスキルを身につけたい』って人に対して、『この案件やって見ますか?』と、積極的にお願いしています。チームのメンバーの未来が幸せになるようにサポートできるところはないか、常に考えていますね」
そんなre-fortがこれからの目標を語ります。
re-fort 「これまでは、好奇心をもとにいろいろなサービスにちょっとずつ手を出していたので、自分の中のコアとなるドメイン知識が薄いなと感じています。
グロースチーム内で会計freeeにどっぷり浸かれるところに異動したので、自分のコアとなる知識や技術を身につけた いですね。
また私の仕事観で言えば、チームで働かないなら会社にいる意味がないと思っているので、引き続き強いチームを維持していきたいと思います」
今後もre-fortは、チームともに躍進し続けることでしょう。