スモールビジネスでも福利厚生を実現 ──立ち上がった新規事業「福利厚生freee」
新規事業立ち上げに魅力を感じたことから、新たな挑戦の舞台としてfreeeを選んだ岩野 愛。入社直後から、スモールビジネスに福利厚生を導入するという、難しいミッションを任されます。そんな中で、福利厚生への想いを抱きつつ、サービスを船出させるまでに至りました。新規事業を通じ、岩野の活躍を紹介します。
新規事業を立ち上げるべく、freeeへ
前職では、いろいろ なカードや決済方法をまとめることができるアプリの事業の立ち上げを担当していた岩野。しかし、事業のフェーズが進むにつれ、違和感を持ち始めました。
岩野 「初期リリースから2年くらいたつと、立ち上げ段階から運用フェーズに入り、そろそろ手を離した方が良いなと考えるようになりました。直感ですが、運用は私に向いてない感じがしたんです。それを踏まえて、もう一度何かの事業を立ち上げたくて転職を考え始めました。
事業立ち上げの経験で得られたものや見えてきた課題が多かったので、また同じ体験を味わいたいという気持ちが大きかったです」
転職を考え始めたのは、岩野の人生においてもターニングポイントとなった時期でした。
岩野 「妊娠&出産が終わり、復帰して数カ月後でしたね。子どもがいる中で、働く環境も柔軟じゃないときついなと考えていました。だから、新規事業の立ち上げを考えていて、なおかつ時間的にも融通がきくところがいいなと思っていました」
そこで、freeeに応募した岩野。freeeのことは前職でいろいろな事業会社を調査していたので、知っていたと言います。
岩野 「スモールビジネスに特化して、良いものを作っている印象がありました。そこで採用サイトを見てみたら、新しいことをやりたい人を募集していたので、すぐに応募しました」
面接では6〜7人と話し、フィーリングが合ったと当時を振り返ります。
岩野 「感覚ですが、『この会社、合いそうだな』と感じました。というのも、一人ひとりがfreeeのミッション『スモールビジネスを、世界の主役に。』に関して、自分の言葉 で喋っていたんです。さすが『マジ価値(=ユーザーにとって本質的な価値があること)を届ける』と掲げているだけあって、顧客をしっかりと見ているなと思いました。組織は大きくなるにつれて、どうしても硬直化する部分があると思います。
その中で、一人ひとりが顧客に目を向けるのは、しっかりした幹がないと厳しいです。会社のステージ的には拡大フェーズに入ってるわりに、カルチャーが浸透しきっていて、良い組織だなと思いました」
こうして2019年9月に入社した岩野は、すぐにチームに加わり、新規事業を立ち上げるべく、動き始めました。
福利厚生における格差を埋め、よりそれぞれの企業に合ったものにしたい
(会議後の一幕)
入社後、岩野は企画一覧を元に市場調査するところからスタート。その中で、福利厚生にたどり着きました。
岩野 「具体的な決定打は、引き合いがあったことでした。ランディングページをつくって『福利厚生freeeの社宅サービス始めます』と広告を打ってみると、2週間で32社から申し込みがあったんです。
そこから20社に具体的な説明をしに行くと、3社から実際に利用したいという声をいただき、社内を説得して、事業投資するという判断に至りました」
こうして2020年2月、開発に着手しましたが、岩野はもともと、大企業とスモールビジネスの間にある福利厚生の格差に対して課題を感じていました。
岩野 「『福利厚生 の充実』は、就職活動や転職で会社を選定するときの要因の1、2位にくるのが常なのに、大企業と中小企業の法定外福利厚生費には、2.4倍もの差があるんです。
そこで、freeeが持つテクノロジーやスモールビジネスへの深い理解といった強みを活かすことで、その差を少しでも埋められないかと考えました。体力が弱いスモールビジネスであっても、福利厚生を充実させることはできるはずですから」
そんな中、スモールビジネスにとって本当に必要な福利厚生サービスを提供するプラットフォーム、福利厚生freeeをどのようなサービスにするか、話し合いが重ねられました。
そしてスモールビジネスが福利厚生を充実させる上でのさまざまな課題が見えてきました。
岩野 「福利厚生の充実には、バックオフィスの負荷がとても大きいんですよ。
たとえば、企業型確定拠出年金を導入しようとすると、社員の出入りに合わせて、毎度年金機構にファックスなどで連絡をしなければなりません。また、フリードリンクはA社さん、プログラミングの研修はB社さんなど、一社一社、プラン内容からお金の話まで契約を結ぶのも煩雑です。何をするにも時間と工数が必要になるので、ある程度の規模の会社じゃないと厳しいんです。
だから、福利厚生freeeでは、同じプラットフォーム上で、クリックひとつで必要なものだけ選べたり、やめたりできるデザインにしようと考えました」
さらに、岩野は大企業が導入しているような福利厚生サービスに対する疑問がありました。
岩野 「福利厚生サービスを導入している場合、バサッと冊子一冊でいろいろと受 けられますよというものが多いんです。選択肢が多いのはいいのですが、企業が望む部分の効果が得られるのかな?と疑問がわきました。そこでスモールビジネスの他社さんと話す中で、やっぱり自分たちなりの熱意を持って筋を通したビジネスしていて、そこに沿った福利厚生があるべきだなと思ったんです。費用もないし多くはやってあげられないけれど、その中でも『これはやります』と絞って提供できるものが『マジ価値』だなと。
だから、『スモールビジネスが利用できる世界観の福利厚生』をつくらないといけないと思いました。ラインナップを見るだけで、その会社が何を大切にしているか、想いを表現できたらすてきだなと思ったんです」
見つけた方向性。ヒアリングを通じて、さらに使いやすいものへ
(freee bizを立ち上げた)
いよいよ開発が始まった福利厚生freee。その中でまず、借上げ社宅サービスを選んだのには理由がありました。
岩野 「法定外福利厚生費の中で、特に大企業との格差が大きい領域が住宅だったんです。だから、必ずやらないといけないと思っていました。
また、社宅を導入するには、書類の準備などの手間や不動産の知識も必要で、知識がないと、より工数がかかります。もし、これがクラウド上で実現できたら、スモールビジネスの人でもバックオフィスの工数をかけずに、従業員の将来設計のサポートしていけると思いました」
また、スモールビジネスの社宅導入サービスは完全なブルーオーシャンだったことも、導入の後押しになったと言います。
岩野 「社宅制度をやってるスモールビジネスは、聞いたことがなかったんです。導入までのハードルからして、スモールビジネスが安易に手を出せる領域ではないですからね。
それに、既存の社宅代行会社のサービスは、賃貸借契約周りのサポートは手厚いものの、実際に社宅を導入する上で外せない、かつバックオフィスの負荷が高い、制度導入時と賃貸借契約後の業務における支援が手薄な印象でした。
また、不動産業界ではファックスと紙がまだまだ主流であり、freeeであればクラウドで管理できるメリットがありました」
そしてfreeeは、福利厚生freeeの第一弾として社宅サービスを始めるにあたり、freee bizという子会社を立ち上げました。
岩野 「freee bizは不動産の契約におけるプロフェッショナルですね。これによりユーザー企業さんが福利厚生freeeで社宅サービスを利用する場合、不動産会社と直接やりとりをしなくて済みます。つまり、管理画面で上がって来た内容を見て、ボタンを押すだけで、承認やデータの一限管理が可能になるのです。
福利厚生freeeは、従業員・バックオフィス・仲介会社(管理会社)をつなぐプラットフォームを目指すことになりました」
サービスの大きな方向性が決まると、細かなところを詰めるために、導入を検討してくれた3社にさらなるヒアリングを進めました。
岩野 「感想が参考になりましたね。案を聞いていただき、スモールビジネスの人が本当に使いやすいものになっているのか、実態を知ることができました。いろんな角度でリアルな問いやフィードバックをくれたことが、本当に助けになっています。
またその中の1社は、過去に社宅を検討したことがあったのですが、給与が大変でどうしていいか、わからなかったそうなんです。そこで『freeeさんならやってくれるだろう』と期待をかけてくれたのも嬉しかったですね」
いよいよ、デザインを決めてエンジニアに落としていく段階に入ったのは2020年の2月。しかし、そこで思わぬ事態が襲いかかります。
コロナ渦で船出を迎えた「福利厚生freee」が進む先
(福利厚生freeeのLP)
岩野 「開発が順調に進む中、 freeeではコロナ禍で、全社リモートが始まりました。みんなでコミュニケーションを取らないといけない期間を、慣れないリモートでやるしかありませんでした。会議の人の出入りが増えていく中、入社から今まで福利厚生freeeの企画しかやっていなかったので、初めて接する人が多く、リモートで距離を縮めていくのには時間がかかりました。
開発から実装というフェーズでしたから、こちらがつくりたいものが100%ちゃんと伝わってるのか、向こうの現状がどうなってるのか、コミュニケーションを重ねましたね」
また、プロダクトの実装面でも判断に迷いがありました。
岩野 「作ろうと思えばどこまでも作れる世界の中で、どこで線を引くかの判断は重要です。最小工数で最 高のUXを作るために、ユーザーストーリーを描いてしっかり議論しました。
自分たちがこのプロダクトで何を大事にするのかをエンジニア・UX・PMみんなが納得した状態で、リリースしたかったんです。だから、何か聞かれたときは論理的に説明しつつ、決めたことが正解になるように持っていきました」
こうして2020年8月にリリースされた福利厚生freee。まだサービスは社宅管理だけですが、コロナ禍もあり、より「マジ価値」になると期待を寄せています。
岩野 「コロナ禍でテレワークが一般化し、住環境の大切さは増す中で、これから福利厚生で社宅を導入する会社も増えるかもしれません。
そこで、バックオフィスに負荷をかけない形で社宅サービスが実現できると、工数削減だけでなく、結果的に採用に役立ったり離職率を低くしたりすることにも貢献できると思います」
サービスとしては、やっと船出を終えた福利厚生freee。これからも、中身は拡充していきます。
岩野 「10段階でいうと、まだ0.5くらいですね。でも社宅より複雑な領域はないと思うので、気持ち的には少し楽になりました。
これから社宅に続く第二弾も予定されているので、どんどんリリースして、福利厚生freeeを大きなものにしていきたいですね。そして、多くのスモールビジネスの皆さんに価値を提供できたらいいなと思います。社内でもbizdev・PM・セールス・サクセスとメンバーも強化されたので、これからの進化が楽しみです。
また、プロダクトの進化に関わるとともに、同じ苦労はしないよう、フローを整理してから、社内でこの経験を伝えていきたいです」
岩野はこれからも、目標と想いを持って、freeeと、プロダクトをさらなる高みへと導きます。