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# 中途入社# 法務# マネジメント

メンバーには行動で示す──法務チームを改革したジャーマネ橋本の試行錯誤

2022年1月、freeeに入社した橋本 大。前職での法務の経験を活かし、freeeでは法務リスク管理部の責任者をしています。この記事ではfreeeの法務チームの役割を紹介するとともに、橋本のキャリア、マネジメントとの向き合い方を綴ります。

希望とは違った法務部での仕事。経験してみると新しい刺激に溢れていた

前職は、住友商事株式会社の法務部で働いていた橋本。法務部への配属は、橋本の希望するものではなかったと言います。

橋本 「法学部を卒業したものの、法務で働きたいとは考えていなくて、内定後人事に配属先の希望を聞かれたときには『法務部以外でお願いします』と伝えました。それよりも海外の大きな発電所の案件やブランドビジネスなどのリテールビジネスの担当営業がしたかったんです」

入社後、配属先として伝えられたのは法務部でした。しかし、法務としてキャリアを積んだ橋本はそのおもしろさを感じ始めます。

橋本 「法務部にはいろんな相談が来るので、常に新しい刺激に溢れていました。法律に照らし合わせて何ができて何ができないのか、どうやったらできるようになるのか調査・報告したり、トラブルの対応をしたり、M&Aを法務担当者としてリードしたり、担当部門によってさまざまな経験をしてきました。

課題を一つひとつ解決していくにつれて、自分のスキルも上がり、会社の役に立っている自覚も持つことができ、やりがいを感じていました。また次第に任せられる課題の抽象度が上がってきたことも、おもしろさを感じる要因になりました」

その後、橋本はシンガポールへの海外駐在も経験します。

橋本 「法務部がある海外事業所は主要都市だけでした。私はシンガポールに駐在していたので、東南アジア全域の相談が集まってきていました。ビジネスのスピードを損なわずに対応するのは簡単ではなかったですが、大変やりがいがありましたね。インドネシアやタイの法律も自力で調査して少しは詳しくなりましたよ(笑)」

駐在を終えた橋本は、法務部のサブリーダークラスとして東京に戻りました。そこで自分が所属する組織をもっと良くしたいと以前より強く思うようになりました。

橋本 「海外駐在時代は、物理的にも組織構成上も東京のメンバーではなくなっていたので、自分がいた組織を客観的に見ることができたんです。

当時の法務部での仕事はコロナ禍もあって、各人が目の前の仕事に一生懸命という部分がありました。法務部が与える会社への影響を考えられるほど、全体として余裕がないことに危機感を覚えていました。

そこでより大きな枠組みで組織を考えられるよう『組織改革をしたいです』と直談判し、ワクワクと楽しく働ける部署にして、周囲からも羨ましがられるような組織にすることも目標にしました。ちょうど全社的な動きもあって、変わっていくきかっかけに少しは貢献できたかなという実感がありました」

freeeにおけるジャーマネの役割と試行錯誤の日々

2022年1月にfreeeに転職した橋本。freeeの法務組織について語ります。

橋本 「2023年1月現在、法務組織はリーガル・コーポレートガバナンス(CG)・リスク管理の3つのチームに分かれていて、私が責任者をしています。

リーガルは、契約審査・法律相談やコンプライアンス推進などの対応をしているチーム。コーポレートガバナンス(CG)は、株主総会や取締役会などの会社の会議体運営、規程管理、登記実務、株式関係、インサイダー情報管理などの社内統治に幅広く対応しています。

リスク管理は文字通り、ビジネス上のあらゆるリスクを把握して、予防・改善の施策を他部署を巻き込んで考えたり、顕在化事案への対応を行ったりしています」

入社時から責任者を担当している橋本。大変なこともありました。

橋本 「freeeではチームや組織の責任者は『ジャーマネ』と呼ばれています。『責任者は単にメンバーの上に立ってマネジメントするのではなく、“タレント”であるfreeeのメンバーを叱咤激励し、成長・活躍をサポートする役割』という意味が込められています。

入社してすぐは、自分自身がfreeeに慣れていなかったので、右も左も分からない状態でジャーマネとしてメンバーの成長をサポートする必要がありました。

とくに前職のサブリーダーは、リーダーシップを持って組織を引っ張る役割だったので、組織を支えるfreeeのジャーマネの考え方にシフトするのには時間がかかりました」

橋本はメンバーのアサインについても悩むことが多いと言います。

橋本 「メンバーにどのような経験を積ませるのか、その塩梅には常に悩んでいますね。

法務はきちんとした努力をすればスキルは上がっていきます。しかし特定の分野について詳しくわかっていても、いろいろなリスクを考えて、場面に合わせて全体的な判断をするためにはそれなりの経験が必要です。

また法務は失敗が許されない場面もあるので、任せる業務の見極めは大事です。経験をさせるべきなのか、自分で仕事を巻き取るべきかの判断は、会社目線でのベストを考える必要があります」

ジャーマネの立場からメンバーを評価することにも難しさがあると橋本は語ります。

橋本 「freeeで定めている定性的な評価制度・IM(インパクトマイルストーン)の運用方法も悩みの1つでした。

アウトプットを出して、失敗しても活発に動いて、さまざまな影響を出せるキャラクターの人にIMは合っていると思います。目標としてもわかりやすく、良い制度だと思います。一方で内向的でじっくりと考えるタイプだと、IMの中でどう評価したら良いのか迷うことはありました。

組織である以上、D&I(Diversity and Inclusion)を確保して、多様なキャラクターがいることが強みであると思います。それを理解した上で、評価制度をどのように解釈して、メンバーの最大限のパフォーマンスを引き出すかが難しく、メンバーへ評価を伝えるときの言葉選びなどには慎重になりました」

自ら示したお手本──ムーブメント型チームを体現するために

橋本が法務に配属されたときの様子を語ります。

橋本 「けっこう大変でした(笑)。一人ひとりの担当範囲が広く、メンバーは依頼された仕事を捌くのが精一杯だったように思います。メンバーの有機的な機能発揮が十分にできずにいることが課題でした。

たとえば、社内SNSでメンションがないメッセージが来たときに、誰もが他の誰かが拾うだろうと、そのまま時間が経ってしまうことがありました」

法務全体のマインドを変える必要があると思い立った橋本は、自分の背中を見せてメンバーの成長を図りました。

橋本 「法務だけでなく、採用・経理・組織カルチャーなどの経営基盤全体を見ているジャーマネに相談したところ『好きにやって良いよ』と背中を押してもらえました。

メンバーの考え・マインドを変えるために行ったのは、自分がまず動くということでした。気がついたメンションは拾う、メンバーに積極的に声をかける、1on1で今思っていることを聞くなど、誰もが思いつくやり方を地道に行いました。

さらに一人ひとりの担当範囲やアサイン状況を見て、負荷がかかりすぎないように調整しました」

そうするうちに少しずつ、周りの反応が変わったと言います。

橋本 「態度で示した上で、全体ミーティングでは『マインドを変えよう』という話もしました。

しばらく経つと『最近チームが元気になりましたね』『組織が変化していますね』と言われることも多くなり、チーム全体が明るい雰囲気になってきたのかなと感じます。少しずつ変わり始めてきている実感はあります。

ただ、まだまだこれからだと思っています。1つの案件やプロジェクトで結果を出すこと、チーム全体に良い雰囲気を作ることはできてきたので、次のフェーズはfreeeのマジ価値2原則にもある『ムーブメント型チーム(※)』を体現することです」
※ミッションに共感し集まった仲間たちが自律的にアクションを起こす。freeeはその熱狂が伝播することで、より良い相乗効果を生み出していく集団であるという考え方のこと

橋本の育成に対しての考え方と今後のキャリアビジョン

橋本にとって、育成とは組織力を上げることだと語ります。

橋本 「個人の力は限られているため、組織力が大事だと思っています。個人ができることを増やすのも大事ですが、その集合体として組織全体でできる範囲・コトを増やしながら常に成長していきたいという意識を持っています」

橋本はジャーマネを担当していく中で、大切にしている2つのことがあります。

橋本 「1つ目は、相手の成長や将来のことを思い詰めすぎるぐらいに考えることです。海外の大学院に留学していたとき、教授が真剣に生徒に向き合っている姿を見て、プロだと思いました。その姿は今でも強く印象に残っています。今はジャーマネなので相手に向き合うことを精一杯やっていきます。

2つ目は、世の人のために働くという意識です。そうすれば巡り巡っていつか自分に返ってくることもあります。これを前提にしすぎると意味がないのですが、一生懸命、誰かの利益を優先して頑張るという考えは常に持っています」

さらに判断に迷ったときの思考ポイントについても語ります。

橋本 「合理性と公平性を大切にしています。自分の利益を考えたらA、相手の利益を考えたらBである場合に、合理性と公平性を意識して、みんながハッピーになる方法を考えるとCを選びます。

合理性も公平性も決して正解のある話ではないですが、俯瞰的に物事を考えてみる。契約書でもそうなんですが、どっちかにとって有利なものって結果として後で揉めることが多かったりするので、2つの視点で考えて選んだオプションが最終的に自分にとってもハッピーな結果になることが多いんじゃないかなと考えています」

そんな橋本がこれからのキャリアビジョンを語ります。

橋本 「いずれは僕がいなくなってもきちんと回る法務組織をしっかり作りきることが目標です。

そして、同様の課題で困っている企業が他にもあると思うので、事例を提供したり、僕が実際に見に行ったりしたいです。そんな仕事の進め方も『スモールビジネスを、世界の主役に。』をミッションとしているfreeeに貢献できる法務としての仕事だと思います」

最後に橋本が今後ジャーマネになるメンバーにメッセージを送ります。

橋本 「ジャーマネは最初からジャーマネではありません。ジャーマネの役割を担うことで、自分自身の成長を意識しながら相手に対して接することを忘れないでほしいです。

世の中のために働く話もそうですが、自分に返ってくることを少しでも意識してメンバーの人に接することで、組織が結果的に強くなるのではないかと思います。ジャーマネを楽しんでください」